【連載】未来の場のつくり方 第3回 後編

自分と深くつながることで、自分自身を信頼できるようになるーセンサリーアウェアネスとエサレン®︎ボディワークから学ぶー(後編)

黒田有子(くろだ・ゆうこ)

 

センサリーアウェアネス 認定リーダー。米国カリフォルニア州認定エサレン®ボディワークプラクティショナー。センサリーアウェアネス・ジャパン 共同代表。Sensory Awareness Foundation (USA) 会員。ゲシュタルトセラピーとの出会いをきっかけに、センサリーアウェアネスやエサレン®ボディワークの学びを始める。2013年、広島県福山市にサロン「なみの音」をオープン。現在は、エサレン®︎ボディワーク、センサリーアウェアネス(オンライン含む)のセッションも行う。https://love-peace-esalen.jimdofree.com

自分とつながるからこそ、人ともつながれる

センサリーアウェアネスもエサレン®ボディワークも、自分で自分に気づくワークです。でも、必ずしも心地良いことばかりに気づくわけではないかもしれません。見たくない自分を見てしまったり、ワークショップなどでいろいろな人と交流する中で、好ましくない自分のパターンに気づいたりもするかもしれません。

 

でも、いまの自分に気づいていることは幸いです。

 

「気づいている」ということ自体が、癒しの力を持っています。

 

そして、気づいていることで自分のあり方を「選ぶ」ことができます。気づかなかったら選択する余地はないのです。また、私たちが体験することに「悪い体験」や「間違った体験」といったラベルを貼ることをしないのも、このワークの大きな特色のひとつです。

 

例えば自分の呼吸が浅いことに気づいたとき、「あ、いけない!深い呼吸をしなくちゃ!」と考えて呼吸をする(英語のdo) 代わりに、その浅い呼吸がそのときの自分にとってしっくり感じられるのであれば、興味をもってその浅い呼吸とともにいる(be)ことで何かに気づくかもしれない。もしもしっくり感じられないのであれば、そのときにしっくりくる呼吸が自然に生まれることを、自分にゆるすこと(allow) もできます。

からだは嘘をつかない。自分が何を求めているかをからだは常に正しく教えてくれる。
からだは嘘をつかない。自分が何を求めているかをからだは常に正しく教えてくれる。

センサリーアウェアネスの師であるジュディス・O・ウィーバーは、「自分のことを知らないで、どうやって人のことを理解できるの?」と、言います。

 

また、私も映っているセンサリーアウェアネスのYouTube動画では、最後のほうで、ジュディスが私に向かって、「自分をサポートできなくて、どうやって人をサポートできるの?」とも言っていました。

 

これは次のようにも言い換えられると思います。

「自分とつながらないで、どうやって人とつながれるの?」

「自分に対して誠実ではないのに、どうやって人に誠実でいられるの?」

 

インタビュアーの半澤さんは、私の声を聞いて何かを感じてくださったようですね。センサリーアウェアネスのワークをリードするときも、私にとってセンサリーアウェアネスの体験の時間なんです。だから結果的に、自分とつながった声や言葉でお話ししているのかもしれません。普段はいわゆる「上手に話す」のが得意ではないんですよ。

 

センサリーアウェアネスと出会って、「自分らしくいてもいいんだ」と思えるようになりました。自分のペースを大切にすることで、周りの人たちのペースやタイミングも大切にできるようになってきました。

感情ではなく「感覚」にフォーカスする

センサリーアウェアネスのワークの中では、感情そのものにはフォーカスしません。例えば、「怖いことに気づいた」という参加者の方からのシェアがあれば、「怖いというのは、どんな感覚なの?」と感覚にフォーカスしていきます。お腹をぎゅっとつかまれている感じとか、背中が固まっている感じとか。

 

「怖い」というのは1つの言葉だけれども、私が感じる「怖い」と、別の人が感じている「怖い」は、別の感覚かもしれません。自分は「怖いと感じている」と思い込んでいたけれど、実は別のことが自分に起きているのかもしれません。「怖い」というラベルを自分に貼り付けるのではなく、「私はいま、何を感じているのだろう」と問いかけていきます。

 

そして、ただ感覚にフォーカスしても、すぐに「自分に気づける」というわけではないかもしれません。私たちは自分の感覚を十分に感じること、自分に気づくことを教わってきませんでした。慣れていないのです。

もし「分からない」ということに気づいたとしたら、それも大きな気づきです。「分からない」ということがどんな感覚なのかを感じてみるのも、興味深いでしょう。

 

このワークによってそれぞれの皆さんが体験されることは本当にさまざまですが、それと同時に、似通っている部分も発見します。

ですから、ワークショップの中では、参加者の皆さんの体験をシェアする時間も大切にしています。自分が言葉にできなかったことを、他の参加者の方が言葉にしてくれて、「そうそう、そんな感じ!」と確認できることもあるでしょう。

 

2012年にカナダ・コルテス島でのワークショップに参加したときの写真。ヒトデや貝殻などの自然のものに触れて、その感覚を味わうことも、センサリーアウェアネスとなる。
2012年にカナダ・コルテス島でのワークショップに参加したときの写真。ヒトデや貝殻などの自然のものに触れて、その感覚を味わうことも、センサリーアウェアネスとなる。

こうしていろいろ私がお話しすることで、センサリーアウェアネスの体験が皆さんのなかで「達成すべきもの」になってしまわないかと心配もしています。

 

まずは、どんな小さなことであれ、そのときの自分が感じていることに注意を向けてみる。そこから自分を見出す旅路が始まるでしょう。

自分に「あたたかい好奇心」を持ってみる

「自分に気づいている」だけで、ずいぶん、自分の中は変化していきます。そして私のセンサリーアウェアネスのセッションでは、いつも最初に、「自分にあたたかい好奇心を持ちましょう」と、参加者の方にお伝えしています。

 

私たちは、「悪いところを見つけて、そこを良くするように努力しましょう」という教育をずっと受けてきましたね。「あなたのままでいいんだよ」とは、まず言われてこなかった。もし「自分に寛容でない自分」が出てきた時は、「あ、またやっちゃってるね」と、ただ気づけば良いのです。

 

寛容でありたいですね。自分自身に、そして周りに。コロナのような非常事態があったりすると、人は寛容とは真反対のほうに行ったりしてしまいがちですが、自分のあり方を大切にしながら、それぞれの人にそれぞれの生き方、あり方があるということを理解しようとする、そのスペースが大切だと思います。

私たちの中の、寛容な気持ちにつながれば、新しい何かが生まれてくるかもしれません。

また、ワーク中はリーダーから「呼吸をどこで感じますか?」「立ち上がってみませんか?」などと声をかけながらセッションが進んでいきますが、それらの声かけは「先生」からの従うべき「指示」ではなく、あくまでも感じてみませんか、やってみませんかという「提案」というか、英語では「invitation」ー「招待」という言葉が使われています。

 

もし、リーダーからの提案よりも、自分にとって興味深いことが起きているなら、その自分に起きていることと共にいることを選ぶというのも、自分に誠実な探究の時間になりますね。

セラピーではなく1人の人間の探究のワークとして

センサリーアウェアネスは、一生続けていけるプラクティスです。私たちも周りの世界も、一瞬一瞬、絶え間なく変化しています。だからこそ、いまの自分に気づいてそれにどう応えていくのか、周りの世界に自分がどう応え、どう関わっていくのか、と問い続けていくのは、すこやかにしなやかに、自分らしく生きていく助けになります。

 

コロナで生活が変わらざるを得なくなった日々ですが、自分のなかに自然に生まれる変化になるべく誠実に応えること、自分自身と、いま起きていることを信頼することが、私の穏やかさを保ってくれているようです。

 

例えば、目にしていて呼吸が浅くなるような情報はなるべく取り入れないようにするとか、パソコンの前に座ることがあれば、目の感覚、お尻や首・肩などが教えてくれる感覚に応えて姿勢をいろいろ探ってみるとか。

安全な場所でマスクを外したときに自然に出る「はぁ〜〜〜」という呼吸を味わう、なども、日々の暮らしの中のシンプルなセンサリーアウェアネスですね。

エサレン研究所内にある「Selver」(シャーロット・セルバー)と名付けられた建物の前で。センサリーがエサレン研究所に与えた影響の大きさが伺える。
エサレン研究所内にある「Selver」(シャーロット・セルバー)と名付けられた建物の前で。センサリーがエサレン研究所に与えた影響の大きさが伺える。

実は、センサリーアウェアネスのベースとなるワークを始めた「ソマティック心理学の祖母」とも言われるエルザ・ギンドラー(1885-1961)も、それを受け継いで「センサリーアウェアネス」と名付けたシャーロット・セルバー(1901-2003)も、「セラピスト」ではありませんでした。

シャーロット・セルバーは、ワークによってセラピューティックなことが起きるときもあるけれど、「センサリーアウェアネスは、セラピーでもメソッドでもテクニックでもない」と、公言していました。

 

エルザ・ギンドラーは、肺結核を宣告されて実家に戻り、かかりつけ医の診察を受けた時、「あなたはどんな風にして、自分をこの病気にしたのですか?」と、ドクターに言われたそうです。

それを真摯に受け止めて、ギンドラーは心静かに自分自身に注意を向けるようになり、やがて病を克服しました。これが、センサリーアウェアネスと現在呼ばれているワークの始まりだと言われています。

 

1人の人間として、自分自身を探究してきた先人のおかげで、このワークはあります。

参加された方が変化をするための「スペース」を持って

私自身の変化、そして私のセッションを受けてくださる方々の変化を目の当たりにすると、それぞれのタイミングがあるんだなぁ、という思いを強くします。

 

私は「リーダー」や「プラクティショナー」として、「何か」を教えてさし上げたり、治そうとしたりするというよりも、皆さんが気づかれるのを、ご自身に意識を向けるのをお手伝いしているだけ。皆さんが自分のペースで自分に気づき、変化をするための「スペース」を持てるように、そう心がけています。

 

いまはオンラインでセンサリーアウェアネスのワークショップを行なっています。

さまざまな制限があり、受けられる皆さんの感じ方も違うので、この方法がベストだとは思いませんが、こんな時でも皆さんとセンサリーアウェアネスを共有できる方法があることをありがたく思います。コロナの後には、元どおり、オフラインのワークショップをやりたいです! 時々、オンラインでのワークで、「ああ、いま実際に皆さんと同じ場にいられたら・・・」と感じることもあります。

 

対面であれば、ペアやグループでかかわるワーク、繊細なワークも行えます。実際に同じ空間で出会い、マスクを外した目の前の人をどんなふうに感じ、どんな影響を受け、与えあうのか。コロナの経験が私たちをどう変えているのか、または変えていないのか、またいろいろな気づきが生まれそうです。

 

私がこうしてお話しすることが、センサリーアウェアネスのオープンさ、豊かさを小さく伝えてしまうことになっていないことを願いながら、それでもほんの少しでも、私の大好きなワークを知ってもらうためのお役に立てていたならしあわせです。

 

(終)

インタビュアー/半澤絹子 2020年7月下旬 Zoomにて

(*2020年10月11日(日)のソマティックフェスタに黒田有子さんが講師として登壇されます。

興味のある方はぜひご参加ください。)