第8回記念大会2021抄録

13:10-13:50 昼の共通講演

身心相関の観点からみた禅定の実践―アーラヤ識説をてがかりに―

 

山部能宜(早稲田大学文学学術院教授)

 

CONTENT

坐禅(禅定)の実践において、調身・調息・調心の三つの柱があるということはよく言われることですが、この三者はどのような関係にあるのでしょうか。私は、息を整えることによって我々の生理的基盤が整えられ、それによって身心の両者が自ら整ってくるという関係があるのではないかと考えています。つまり禅定の実践において生理的基底部の状態が大きな役割を果たすということになりますが、伝統的な仏教教理に含まれる「アーラヤ識」という概念には、このような生理的基底部とかなり重なる部分があるのではないかというのが私の仮説です。本講演では、このような可能性について改めて考えてみたいと思っています。

 

PROFILE

大阪大学法学部卒業後、大谷大学文学部、大阪大学大学院文学研究科を経て、イェール大学大学院宗教学研究科に留学。1999年に観仏経典の成立問題を論じた学位論文により博士号(Ph.D.)取得。職歴としては、九州龍谷短期大学、東京農業大学を経て、2015年より現職。仏教の禅定実践における身心相関のメカニズムを、教理文献の中から読み解くことに取り組んでいます。最近の成果に、「<公開講演>アーラヤ識説と禅定実践の関係について―特に身心論の問題に着目して― 」『駒澤大学大学院仏教学研究会年報』52: (1)-(37), 2019; A Comparison of a Buddhist Classification of Human Temperaments and Ernst Kretschmer's Model, Waseda RILAS Journal 5:293-302, 2017;「アーラヤ識論」『シリーズ大乗仏教7,唯識と瑜伽行』, 181-220, 春秋社, 2012等があります。

14:00-15:45 昼の5つの分科会ワークショップ

(当日お好きなクラスをお選びください)

【分科会5】早稲田大学総合人文科学研究センター「心と身体の関係と可塑性に関する学際的研究」部門

「哲学、心理学、医療 ―横断する心と身体の研究―」

座長:宮田裕光早稲田大学文学学術院教授/本協会運営委員

小村優太(早稲田大学文学学術院准教授)

村松聡(早稲田大学文学学術院教授)

 

 

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人類史を通して絶えざる探求がなされてきた「心と身体」の関係や理想のあり方に迫るには、時代や学問分野を横断する学際的なアプローチが必要不可欠です。本分科会では、哲学、宗教学、心理学、倫理学などを専門とする各研究者の視点から心身についての研究を紹介し、心と身体をめぐる現代的問題のあり方を浮かび上がらせてみたいと思います。近世以前の哲学、宗教や医学にみられる心身観、現代の心理学や脳神経科学、生命医科学における科学的研究、現代哲学や医療のなかでの心身をめぐる議論などを横断的に俯瞰することで、現代の私たちが「心と身体」をどのようにとらえ、またどのように向き合っていけばよいのかが浮き彫りになることでしょう。

 

PROFILE

小村優太:

早稲田大学文学学術院准教授

1980年、石川県生まれ。東京外国語大学外国語学部、東京大学総合文化研究科超域文化科学専攻(比較文学比較文化)博士課程単位取得退学。博士(学術、東京大学)。2021年より現職。

大学時代はアラビア語を専攻し、中世におけるイスラームとキリスト教の思想交流を学んだ。大学院ではより哲学方面にシフトし、イブン・シーナー(アヴィセンナ)の魂論を軸とした、ギリシア、アラビア、ラテンの哲学的交流を研究した。最近はイスラームやキリスト教における哲学と神学の対話にも関心を伸ばしている。近著に「アラビア哲学とイスラーム」『世界哲学史4』ちくま新書など。

 

宮田裕光:

早稲田大学文学学術院教授 日本ソマティック心理学協会運営委員

1981年、奈良県生まれ。京都大学文学部、同大学院文学研究科博士後期課程(心理学専修)修了。2019年より現職。大学院時代までは、ハトなどの鳥類を主な対象に、問題解決や先読み能力を実験的に研究した。その後、西田哲学などの影響を受けて、東洋的心身観を基礎とした統合的、調和的な心理学を志向し、朴-佐々木式速読法、伝統的ヨガ、武道、笑いヨガなどの実践による心身変容について研究している。著書に『動物の計画能力―「思考」の進化を探る』など。

 

村松聡:

早稲田大学文学学術院教授

1958年東京生まれ。上智大学哲学科、同大学院を卒業後、ドイツ、ミュンヘン大学留学。横浜市立大学、国際総合科学部、准教授を経て、現在、早稲田大学文学学術院、教授。研究テーマは近・現代の哲学、倫理学、応用倫理学と生命倫理。パーソン論、他者論、身体論を中心に研究している。著書に「ヒトはいつ人になるか」日本評論社、編著「教養としての生命倫理」丸善、共著として「徳の倫理学」芙蓉書房出版など。

 

 

【分科会6】「身体と霊性」部門

「整体から観る生命」

座長:合田秀行(日本大学教授、仏教学・比較思想)

山田昌広(整体指導者)

コメンテーター:長谷川智(山伏、一橋大学非常勤講師、本協会運営委員

 

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山田昌広先生を講師としてお招きして、座長の合田秀行、本協会運営委員・長谷川智先生とともに、前半は3人で「整体」をテーマに身体を巡って語り合います。

後半は参加者の皆さんからの質問を受けながら、進めていく予定です。治療ではない

整体とは何か。根本的な問いを山田先生に投げ掛けてみたいと考えています(合田記)

 

PROFILE

山田昌広:

 20年以上にわたって、整体の指導に携わる。整体操法を中心に個人指導を行う一方、各種講座による指導にも取り組んでいる。

 

【ワークショップ7】

「心と身体を拓く笑いヨガ」

 

高田佳子(日本笑いヨガ協会代表 日本応用老年学会理事)

 

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笑いが心身の健康にポジティブな影響を及ぼすということは、生理学、心理学の分野で研究されてきました。通常、笑いは「愉快だ」という感情により表出します。笑いヨガは、笑いの発生に感情を用いません。呼吸法と笑う動作を組み合わせたシンプルな健康体操です。グループエクササイズとして考案され、笑いの体操と、手拍子とチャンティング、姿勢等の形式を参加者が同時に行います。呼吸を合わせたり、アイコンタクトが自然にできたりするテクニックが含まれ、笑いの伝染を起こし、無理なく笑えます。笑いの効果が気分に関係なく得られ、ストレス軽減、自律神経の調整等の効果が確実に得られます。笑いによる、心身の変化を実感してください。

 

PROFILE

日本笑いヨガ協会代表。日本応用老年学会理事。1983年株式会社アートランド設立。代表取締役就任。一級建築士。桜美林大学国際学研究科老年学博士前期課程修了。老年学修士。「高齢者の笑い」「笑いと健康」「高齢社会とイベント」がテーマ。2009年インドで笑いヨガティーチャーとなり、全国で講演・指導を行ってきた。『ボケないための笑いヨガ』(春陽堂)『大人の笑トレ』(ゴルフダイジェスト社)等、著書・翻訳書多数。

 

【ワークショップ8】

「“ソマティック”とデジタルコミュニケーションのゆくえ」

 

阪井祐介(SRE AI Partners(株) ゼネラルマネージャー)

小笠原和葉(ボディーワーカー、東北大学医学部大学院研究生)

 

 

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近年急速に普及したZOOMを始めとしたデジタルコミュニケーションは、便利さと当時に、その身体性の欠如に違和感も感じさせます。本講座では、鮮明な情報伝達よりもむしろその周辺にある「存在(アウラ)」や「気配」を伝えることを重視して開発されたソニーのテレプレゼンスシステム「窓」を使った研究を通して見えてくる人の存在やコミュニケーションの本質についてディスカッションします。私たちがコミュニケーションにおいてほんとうに重視しているのは何なのか?視覚情報はそれほど重要ではない??距離をこえて存在(アウラ)を伝える「窓」とは?!最新の神経科学的知見も交えながら「共にあること」のダイナミズムに迫ります。

 

PROFILE

阪井祐介:

ソニーグループ株式会社R&Dセンター、シニアUXプランナーとして “あたかも同じ空間にいるような”自然なコミュニケーションが実現するテレプレゼンス システム「窓」の研究開発に入社以来20年に渡って従事。2019年より、グループ会社であるSRE AI Partners(株)で「窓」を用いた導入コンサルティング事業を、オフィス、医療・介護、教育、地域創生等の幅広い領域に展開している。

 

小笠原和葉:

自身の健康への問題意識をきっかけに、エンジニアからボディーワーカーに転身。代替医療から現代医学まで、幅広く学術・臨床研究を深めながらさまざまな発信や コラボレーションを通して新しい健康観「健康3.0」を探求している。近年は個人や組織のあり方や可能性を、身体性の観点から模索する組織開発分野での活動も多い。Somatic Experiencing®認定プラクティショナー。宇宙物理学修士。

 

 

【ワークショップ9】

「南米発祥・生命のダンス~ビオダンサ」

 

内田佳子国際ビオダンサ連盟公認ダイダティック・ティーチャー

 

 

 

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Biodanzaは、グループ/音楽/動きのダイナミズムの中で、人が個として、種(しゅ)として、根源的な力に触れなおすことを願って生まれたダンス・ワークです。

創始者のトーロは南米チリに生まれ、人間・生命・宇宙全体へのあくなき探求心から、教師、人類学者、心理学者として実践と研究に打ち込む傍ら、詩人として多くの作品を遺し、自ら生みだしたビオダンサを「人と人の出会いの詩」と表現しました。

本ワークショップでは、リズムに躍動し、メロディーに流動する身体の自然な動きが、鮮烈で凝縮した非言語のことばとなって行きかい、また次なる動きを生みだす循環の中で、上記のトーロの言葉をみなさまと見つめなおしてきたいと思っています。

 

 

PROFILE

ブラジル音楽に惹かれ、東京のサンバ・スクールでの活動を経て、人智学をベースにしたブラジルのコミュニティ活動を支援する日本のNGOに参加。研修先のサンパウロでビオダンサに出会い、「生きること」と「踊ること」の分かちがたいむすびつきを体感。2000年に初めて日本に紹介する。ブラジルと欧州でファシリテーター資格と養成資格を取得。定期クラスのほか、企業や団体の市民講座、助産院、幼稚園、大学でのワークショップを展開。

「備考/持ち物」

本来は、コンタクトを伴うエクササイズを大切にするワークですが、感染対策に配慮しながら進めていきます。動きやすい服装でご参加ください。

 

16:00-17:30 ソマティックカフェ(交流会)

 

この二日間の体験、思い、考え、感情、学びを少人数のグループでシェアし合う場です。様々に異なる背景、職業、年齢、地域などを持ちながらも、ケアとソーマという共通の関心を持つ人たちとの交流の機会を創設できることを願っています。毎回、多くの参加者からは、良いフィードバックをいただいている定番企画です。