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講師インタビュー 第13回 瀬戸嶋 充(ばん)さん

 

 

今日の講師紹介は、瀬戸島充さん(通称、ばんさん)です。

ばんさんには、「竹内からだと言葉のレッスン」、「野口体操」の2つのクラスを担当いただきます。

 

 

 

◆ばんさんと竹内、野口2つのワークとの出会いについて教えてください。

 

◇当時は、教育実習、教員試験の時期だったと思います。実習に行ったときに、子供とのコミュニケーションが難しく感じ、教員試験の面接では、志望動機など一言も話せませんでした。以前から感じていた身の置き所のなさが、就職のときに出てきたのだと思います。

 

そんな頃、当時の彼女が演劇を志望していたので話に聞いていた竹内敏晴のレッスンを勧めてみたのです。レッスンに行った彼女があまりにも楽しそうなので、気になって自分も飛び込んでみました。

 

竹内演劇研究所でのからだと言葉の教室は3か月単位で、週のうち1日は野口体操、2日は竹内レッスンでした。81年のことです。

 

 

◆竹内からだと言葉のレッスンは、どんなワークですか?

 

◇竹内は、戦後、耳が聞こえない、話せないという障がいを持つ中で、新薬の登場により聴力を回復しました。あらたに自らの言葉を回復していく過程と、言葉をモノ化し殺して行く時代の流れが交錯し、葛藤を起こします。やがて、竹内は演出家として、演技・演劇のレッスンを通じて、言葉とからだ=人間の可能性をひらき、言葉の命の回復を目指して、時代の状況に戦いを挑みました。

 

青年後期から耳が聞こえるようになり、言葉を獲得したことが困難の始まりで、社会とのかかわりが変わってしまった。身体的にも傷を受け、敏感になったことがレッスンにつながっています。

 

レッスンは楽しかったですね。

生徒が演者と観客に分かれて、5、6人の演者はいきなり舞台に立たされます。自由演技ですね。一番最初、自分は石ころをやりました。10分間、舞台の上でまるまっていたんです。

 

舞台の後、みんなで感想を共有する時間があります。当人が何をやっていたか、観客からはどう見えたか、そのギャップが面白かったですね。

 

感想には暗黙のルールがあって、批評、判断を入れません。正解を求める場ではなく、答えはそこにあるんです。

 

安全な場でやらかすことができる。それまでは、考えをまとめて言葉にするまでに時間がかかってしまい、会話の流れの中で表現できずに周りから否定されてきた人生でした。竹内のところでは、考えなくていい。ただ行動すればいい。生徒には東大生も混じっていましたが、自分のことを認めてもらえていましたね。

 

82年からは1年クラスになりました。体の緊張を解く、声をひらく、話しかけ・出会いのレッスンといったものはありましたが、システム立った指導はなかったです。自分の奥から起きてくるものを体で受け止める。社会化の中で身に着けてきた自分を殺してしまうものを切っていくことで、声、表現が出てくるんです。

 

竹内のところで2年半レッスンを受けてスタッフになり、それから1年後には教える側に回りました。何をしていいか分からない中で、やるしかない状況でしたね。

分からないことを肯定すると答えが出てくる。すると、また新しい「分からない」が出てくる。ずっと繰り返しです。

 

88年には竹内の演劇研究所が解散しました。そこから独り立ちです。レッスン場だけが残され、分からない中でスタートしました。

そんな中で、レッスンを続けていくうちにからだの変化が見えるようになってきました。からだの中の流れを見ていきます。どの方向に行くとからだが固まるか分かるんです。だから、無理に壊さなくてもいい、時とともに変化するに委ねます。

 

解剖学的な視点で見る「身体」を捨て去ることで、からだの温かさや微細なものが感じ取れます。言葉を交えて体験する見えない「からだ」があるんですね。

 

 

◆一方の野口体操は、どんなワークですか?

 

◇野口三千三は体育教師でしたが、ぎっくり腰を患い、体操の概念が壊れていきました。そこから力を抜くことが大事であること気づいたんです。

それまでは、戦時中を経験したこともあってオリンピック選手のように身体能力が高い方が良いという強い信念をもっていました。

しかし、例えば体が硬いという概念を捨て去ると、そこには体という水の入った袋がある。体の微細な変化に気づき、さらに感覚が微細になっていく。体が変化していることを発見する楽しさがあるんですね。

 

一方、日本の演劇はロシア人演出家スタニスラフスキーから始まっています。明治に入って、日常を舞台で語るやり方は、型を重んじる歌舞伎との対極にありました。スタニスラフスキー・システムは、脱力・集中・体の広がり・心理・行動など、体や声の使い方を演技術として身体に持ち込んだものです。

 

野口の脱力が、スタニスラフスキー・システムとマッチしました。戦後、文字でしか伝わってこなかった演技術を野口が体現していたのです。野口が芝居稽古に誘われて、演劇界とのつながりができました。

 

野口の動きは、他力です。重力、重さの変化で動かされていく。体を起こすにしても、背筋に力を入れるのではなく、重さを下に落とすことで起き上がってくる。動いている最中の気持ちよさがあります。

 

地球上の重さは、すべて地球の中心に集まっています。そこからコミュニケーションが生まれてきます。「皮膚のうちそと」では区分できない大地まで含めた体があり、足裏から流れ込んでは抜けていきます。

 

微細な変化は毎回新しい。繰り返すことで新たな発見がある。これを毎回、身体をとおして体験します。微細に、より微細になっていく。その先に何があるか、意識をチューニングするんですね。

 

言葉で説明するとややこしいが、やれば簡単です(笑)。そして面白い!

 

 

◆フェスタでは、どんなことをテーマにしていきますか?

 

◇竹内レッスンでは、声・言葉が命の表れであることを体験してもらいたいですね。

いのちの「い」は息で、霊的なもの、自然の力です。意識ではとらえられないものに生かされている。「ち」は力です。

 

意識や身体のこわばり緊張をほどいておくと体全体で声が出てくる。器を整えて調律すると、それがやってきます。レッスンがレッスンをしているんです。人の声が開けていく、その過程をみんなで体験したいですね。

 

野口体操では、身体がほどけていく過程ですね。息遣いに出会いたいです。体を楽しもう!

 

 

(インタビューアー 山田岳)

 

 

 

 

 

ソマティックフェスタ2017 9月29日(金)

 

 

 

野口体操 〜いのちに貞く・無意志無力の「からだ」の動きを体感

 

カルチャー棟2F 和室2   10:00~11:45

 

お申込みはこちら

 

https://spnworkshop.handcrafted.jp/items/7158816

 

 

 

竹内からだとことばのレッスン 〜「いまここ」に立ち自他に出会う

 

カルチャー棟2F 和室2   12 :45~14:30

 

お申込みはこちら

 

https://spnworkshop.handcrafted.jp/items/7158807

 

 

 

 

会場:国立オリンピック記念青少年総合センター  カルチャー棟

 

 

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