講師インタビュー 第11回 橋本有子さん

 

 

「ラバン」の名はダンス教育だけでなく、からだの「動き」に関わる人なら一度は耳にしたことはあるだろう。ルドルフ・ヴォン・ラバンが生み出した身体動作の分析理論、ラバンムーブメントアナリシス(Laban Movement Analysis:LMA)の概念はさまざまな分野に取り入れられているが、動きを具体的にどのように分析するのか、自らの動きを通じて直接体験した人は少ないのではないだろうか。

 

 

 

今回は、ラバンを本格的に学び、昨年NYから帰国したばかりのラバンムーブメントアナリシス専門家、橋本有子さんにお話を伺った。

 

 

 

Q:「ラバンムーブメントアナリシス:LMA」とは、一言でいうとどんなものですか?

 

―動きを言語化するためのツールだと思っています。私たちは物や概念に名前を付けて認識し、共通言語を用いることで他者とコミュニケーションを取っていますが、動きは変化し続けることが特徴ですので、その瞬間瞬間の変化を捉えていきます。あらゆる動きは組み合わせで、色に例えると赤と青を混ぜると新しい色が生まれるように、動きも化学反応のように、組み合わせ次第で全く異なる表情を見せます。ですので、基本的にはLMAは組み合わせる前の動きの基礎要素―動きの素数のようなもの―を広げてレイアウトされた地図のようなものであり、また凝縮された辞書のようなものでもあるかと思います。もう一つ重要なのが、LMAはここからここまで何度動いた、という量を測っているものでなく、「どのように」動いたか、といった動きの質を観ています。

 

 

 

 

 

 

 

Q:実際LMAはどのように使われているのでしょうか?

 

―世界ではコミュニケーション学、ロボット工学、心理学、リーダーシップ学、運動分析やアートの世界まで幅広く活用され、学術論文も出ています。人は生きている限り動き続けますので、LMAの応用範囲は広いのでしょう。

 

 

 

Q: ご自身では具体的にどのように実践していますか?

 

―運動やダンスの授業・レッスンの組み立てに始まり、客観的な視点からその人の動きの特徴を捉え、動きへの気づきを促したり、新たな動きの提案をすることにも使っています。私自身、無意識に選んでいる動きのパターンを意識的に捉えることで、腰に負担がかかる非効率な身体の使い方に気づき、パターンの入れ替えを行ってきました。身体や身体の動きに向き合うことがBody-Mind Connectionを強め、結果的に痛みの改善や怪我の予防になることも、LMAを通して学んだことの一つです。

 

 

 

Q:LMAとはどのように出会ったのですか?

 

―最初に日本で知った時は、理解が難しく嫌悪感がありましたが、アメリカ留学での2人の先生との出会いによって、それは大きく変わりました。70代のモダンダンステクニックの先生と、所属していたダンスカンパニーのディレクターの指導の基盤にLMAがあり、いわば理論が実践の中で「生きた」LMAを学べたのです。留学前に苦しんでいた腰痛を解決する助けになったものと、動きやダンスの指導の軸となるものが同じものだったとは、私の想像・期待を遥かに超えていました。元々、軸となるものや芯となるもの、といった概念が好きな私にとって、LMAがピッタリ合ったのだと思います。それまで抱えていた疑問に全て答えてくれた気がしました。

 

 

 

 

 

 

Q: その後の活動は?

 

―留学して4年後にはNY州ブルックリン市で専門家になるトレーニングを受け、5年目はアシスタントとして勉強を続けました。現在はカンパニーのディレクターのアシスタント/ゲスト講師としてアメリカで指導者養成に携わり、日本でも入門クラスの指導を少しずつ始めています。

 

 

 

Q:6年弱のアメリカ滞在の後、そのまま残って指導を続けようとは思いませんでしたか?

 

―元々、日本の学部では学校教育を専攻し、義務教育の中でのダンスや表現の指導に興味がありました。留学中はダンス教育法を学び、帰国して日本の教育に携わりたいと考えていました。アメリカの学校(幼稚園〜高校)でインターンをした時に、子ども達は可愛くて環境もとても刺激的でしたが、異国の地で多様性に直接触れる中で、私は日本人だ、と強く感じたことは、これまで受けてきた日本の教育に関わりたいという思いに自然と繋がり、結果的に予定通り、日本に戻りました。

 

 

 

 

 

 

 

 

Q:現在はどのような活動を?

 

―大学では、教員や看護師を目指す学生たちの身体認知 (body awareness) を高めることを目標に、ソマティクスの視点を大切にしながら体育やダンスの授業を担当しています。また、子どもたちを対象にダンスの指導をしています。最近では、動きの専門家としてTV番組の制作にも関わらせていただきました(Eテレあそんどるズ)。また、現在自然科学的なアプローチを使った研究にも取り組んでおり、広い視野を持ちながら、身体・身体運動に関わる勉強を続け、発信していきたいと思っています。

 

 

 

Q:最後に、ソマフェスの90分のなかで何を一番伝えたいですか?

 

―様々な動きを体験しながら自分や他者の動きを意識化することで、動きの奥深さや新たな身体感覚と出会い、そこから広がる新たな世界を垣間見ていただけたら嬉しいです。

 

 

 

 

 

(インタビューアー 吉田美和子)

 

 

 

 

 

ソマティックフェスタ2017 9月29日(金)

 

動きを捉える 〜Laban Movement Analysis//Bartenieff Fundamentalsの実践

 

カルチャー棟1F小練習室10 10:00~11:45

 

お申込み https://spnworkshop.handcrafted.jp/items/7158845

 

 

 

 

会場:国立オリンピック記念青少年総合センター  カルチャー棟

 

 

〒151-0052 東京都渋谷区代々木神園町3−1

 

【電車】 

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地下鉄千代田線 代々木公園駅下車(代々木公園方面4番出口) 徒歩約10分

【バス】

新宿駅西口(16番)より 代々木5丁目下車

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