講師インタビュー 第14回 佐野 浩子さん

 

 

 

コーマワークの世界を体験する 佐野浩子さん

 

 

9月の初め、目黒駅から徒歩数分のところにある日本プロセスワークセンターに伺い、コーマワークを担当いただく佐野浩子さんのインタビューをさせていただきました。

 

 

プロセスワークとは、今ここで起こっている事には何か意味があると思えること。ワークの目指すところは、今までの自分もOK、今ある自分もOK。それが『自由になること』につながります。これは、昏睡状態でベッドに横たわる人だけの事でなく、あらゆる人にそして社会全体にもいえることです。

 

 

突然事故で半年間昏睡状態になってしまった青年へのワークを記録したビデオでは、コミュニケーションの中から奇跡としか言いようのない回復を見せていただきました。

インタビューで伺ったお話の一端を紹介したいと思います。

 

 

 

 

 

〈臨床心理士として〉

 

 

なぜ臨床心理士になったかというと…10歳の時、3ヶ月位の間に立て続けに身近な3人の人が亡くなったということがありました。祖父と同級生の事故死と病死。その時に「死って何?」「人生って何?」って強烈に想い…今にして思えば、少しうつ状態になる程、考え込んでしまって…中学生の頃には「私は将来、カウンセラーになろう」と決めました。そうして大学で心理学を学んでいる最中にプロセスワークと出会い、これはすごく面白い!と思いました。その頃に偶々ボランテイアで学習指導に入っていた小児科病棟に昏睡状態のお子さんがいて、自分が関わるとその患者さんにすごく反応があったのです。自分が行くと体がぐっと近づいてくる、手が動くとかあって…ああ昏睡状態とか意識がないと言われていても、本当にそうなのかな…と思ったり、病気で意識がなくなって死んでいく時もコミュニュケーションが可能なのではないか…と思ったり…プロセスワークをやりながらそんな体験をしていました。

 

 

 

その後は臨床心理士としてずっと働くわけですが…女性の暴力被害や子どもの虐待の支援にも入ったりして過ごしてきました。同時にプロセスワークも学び続けていましたが、そこまで熱心ではなく、「週末の恋人」という感じでセミナーに出たりしていました。それが、いろんなこともあって、一旦仕事を辞めて、「自分が人生に何を残しているのかなあ・・・」と思ったときに、「もう一度プロセスワークをしっかり学ぼう。」と思って、39歳の時に渡米しました。そこでゲリーという先生についてコーマワークを学び始めます。始めは怖くて仕方がなかったです。コーマワークの練習をしていると普通の人でも深い意識状態に入っていくのですが、なんか訳がわからなくて怖かったり、でもやっているうちに割と私は得意なんだなあ…と思ったり、そんな経験をいろいろして・・・。それと大学院生だったので、日本とアメリカを行き来しながら、日本の大学病院で実習をしていました。ER(救命救急)に配属されていましたが、そこに緩和ケアの医師もいて・・・亡くなる人と関わることになって、そこで始めて昏睡状態の人とのワークを実践し始めることになりました。そこから、まあびっくりするようなことがいっぱい起きて・・・始めはおっかなびっくりで、これでいいのかなとか、この人は私が関わって嫌じゃないのかな・・・とか、いろいろ思いながらやっていました。とても印象的だったのが、初期の頃に出会った10代の男の子。この子がもの凄く反応を示してくれたのです。このまま植物状態か回復する望みは非常に低いだろうと言われていて、6ヶ月以上すでに昏睡状態でした。そこに私が行って、目が開いていたので目を合わせたら、口をガーッと開けたので、「いいねー」とか声をかけたら、そこから凄く反応が出てくるようになって。私が一緒になって「口あけてー」とか言うとちゃんと開いてくれたりして。「ああ、こういうことがあるんだな」と思いました。その子が契機になって、病院の人たち、リハビリの人たちにもコーマワークを知ってもらえるようになりました。今、その子は意識が戻って、車椅子で生活できるまで回復してきました。あとは、ゲリーに付いてワークに入らせてもらって、感動的で涙をするような体験が一杯あって、このワークにどんどんのめり込んでいった感じです。

 

 

 

 

 

〈プロセスワークとの出会いからコーマワークへ〉

 

 

最初にプロセスワークが面白いと思ったのは、ミンデルとの出会いでした。ミンデルの一番印象に残っているエピソードは、ある人のワークをみんなの前でやっていた時に、そこにいる皆も同じ気持ちになっていて・・・そこでミンデルが周りにいる人の手をぱっと掴んでみんなで踊りだしたことがありました。その時に「問題として持っていることは、もう私だけのものでないし、それが変容していく時にみんなも動かされていく」って。しかもその体験が、私にはヴィヴィットで「生きていて良かったと!」みたいな感動がありました。プロセスワークを通じて、自分の深いところが表に出てきて「これが生きていることなんだ」「これが自分の人生なんだ」という喜びを体験して、プロセスワークがどんどん面白くなっていきました。

 

 

 

プロセスワークの特徴は、領域がすごく広いことです。コーマワークのような意識のない人から、組織でバリバリ働いている人のグループワークまであります。ただその根底に流れているのは「起きていることには全て意味があって、その意味を深められたとき私たちの人生はもっと豊かになる。」「いろんな出来事は、私たちがまだ分かっていない、知らない私たちの部分に出会うためなのだ」という考え方なのです。

 

 

 

そういう意味で言うと、昏睡状態の人も「昏睡状態に入ったことにも意味がある」と考えていて、「この人たちは何か新しい自分に出会おうとしている」というように見たりします。根底の考え方はすごくシンプルですが、応用されている範囲はすごく広いのが特徴です。

コーマワークは昏睡の人だけを対象としていると思われがちですが、スキルとしてはどんな方にも応用可能です。意識があろうがなかろうが、昏睡の浅いレベルから深いレベルまで。私は、脳死の方や、認知症などの意識障害の方ともお会いしていて、コーマだけには限っていません。実際には「コーマスケール」とかありますが、そもそも「意識」の定義自体が難しいので、昏睡状態を定義することも難しいですよね。

 

 

 

 

 

〈コーマワークの実際〉

 

 

どういうことをやるかというと・・・私は始めにご家族や担当医師に会って、その人がどういう人であるのかをよく聞きます。例えば事故に遭うまでにどういう生活をおくってきたのか、病気になるまでにどうであったのか・・・昏睡になる前にどうであったのかを聞いておきます。そこから元々その人がどんな人であったのか、何かトラブルを抱えていなかったとか、小さい頃の夢(寝ているあいだに見る夢)なんかも聞いたりします。これは元々プロセスワークがユング派から来ているので、小さい時に見ていた夢に大きな意味が生じていたと考えます。私はそれらを聞いたあとで、その人の今の状態はどんな状態で、その人自身が自分のことをどのように思っていたのか、あるいはこの人が出会っていない一面って、どんな一面なのだろうと想像しておきます。そして、実際に会ってその人に関わる時は、その人の呼吸に合わせ呼吸をして、吐く息に合わせて話しかけていきます。そして話しかけてみて、リアクションの大きいところがあると、そこを手がかりに深めていきます。

 

 

 

つまりは、仮説を立てて話しかけ、フィードバックを見て、この人は今こういうふうなんだなと核心を掴んでいくのです。話しかけながらやっていて、すごく反応が出てくるのは、その人にとっていい方向(good)なのだと見ていきます。そういう働きかけを繰り返していきます。

 

 

 

時に、ご家族の方の了解を得て、体に触れることもあります。境界がわからなくなっている時にしっかり身体に触れることは効果的です。例えば、手が拘縮している人がいても、無理やり開こうとはしません。握っていることにも意味があると考えているので、もっとギューッと握ってもらって、むしろ強めたりしてサポートします。そして自分の体の一部が、どういう風になりたいのか気づいてもらうという方法です。体のサインを読み取っていくわけです。プロセスワークでは体の動きには意味があって、そこに物語みたいなものが流れていると考えます。私たちはそれを「ドリーミング」といいます。体が夢を見て動いているのではないかと。私たちの何気ない動作や動きの中に、実はは私たちの知らない自分がいて、無意識にメッセージで出している。そこを深めていくと、今までは知らなかった自分が分かってくることがあるのです。

 

 

 

そう言う意味ではプロセスワークはひとりひとりが違うし、プロセスも違うということなのです。ひとりひとりの起きていることについていく、それもそれぞれの方法論でついていくのです。そういういう姿勢が、どんなことにも意味があるという姿勢です。人生に起きてくることを信じる。無駄なことが起きてくることはないという信念です。

 

 

 

 

 

〈ワークの目指すところ〉

 

 

私たちが今までのアイデンティティに加えて、新しいアイデンティティに出会い、“どちらも私だ”という柔軟性がゴールかもしれません。様々な自分に“気づく”(アウェアネス)ことが大切であるということも言いますが、それだけではありません。ミンデルの素晴らしいところは、人生のどんなことに対してもYesという姿勢を持ち、どんな人も排除しないということです。どんなことが起きても、そこに心を開いていこうという態度で臨む。私が悩んでいることは社会の中の一部としての悩み・躓きであって、もし私が自分のいろんな部分にYESということができたら、私がYESと言えたことが、社会にも影響を及ぼすのではないかという考え方なのです。プロセスワークが更に面白いのは、自分や他人にOKが出せない時に、出さなくちゃ!と思わなくていいということ。時にはOKが出せない自分も入口になって受け入れていきます。今起きていることに意味があるよね、とそこに気持ちを開いていくことをプロセスワーカーはやっていきます。

 

 

 

 

 

〈改めて、プロセスワークの「プロセス」とは?〉

 

 

 プロセスは「過程」ということですが、どちらかというと「人生の川の流れ」「道のり」みたいなイメージですね。いろんな言い方をしていて、道教のタオと言い換えることもあったり、ミンデル自身は神の意図だと言ったり・・・。

 

 

 

プロセスワークでは「大いなるものの意図」とかで、私たちに「何かを気づかせよう」、私たちの「未知なる部分に心を開かせよう」ということで起こってくる「流れ」みたいなものをプロセスと呼んでいます。未知なるものは外にあるのではなく、身体症状であったり、夜見る夢であったりします。人間関係で誰かのことを嫌になった時もそうだし・・・そういう厄介なことや、困ったなあという中にも、既に未知なる自分の種が眠っているとみていきます。

 

 

 

 

 

〈フェスタでは何を?〉

 

 

 まずは参加者の皆さんに昏睡状態になって貰おうと思っています。本当に体は動かない、だけどもしかしたら意識だけはあるかもしれない、その状態で少しいていただく。

 

 

 

私、今まで何百人の方に体験してもらっているのですが、皆さんすごく癒されるって言うのです(笑)。気持ちよくて、もう出てきたくなかったとか、自分がただそこにいて、内側にいて、昏睡状態にすごく癒されましたとか。それを体験してもらうと、私たちが持っていた昏睡状態のイメージはちょっと違ってくると思います。もしかしたら、気持ちよくてもう戻ってきたくないと思うかもしれない。それが出来た時に始めて、じゃあどんな声掛けだったら戻ってきたくなるんだろう・・・そういうことを体験してもらいたいと思います。

あとはコーマワーク的な触り方ですね。体がピックっとなったら、拘縮したら、どういうふうにサポートするかとか・・・そんな体験の機会になればいいですね。

 

 

 

 

(インタビューアー 荒井英恵、小関千津子、山田岳)

 

 

 

 

 

ソマティックフェスタ2017 9月29日(金)

 

 

 

いのちの思いを全うする技術 〜コーマワークの世界を体験する

 

カルチャー棟1F 小練習室13     12:45~14:30

 

お申込みはこちら

 

https://spnworkshop.handcrafted.jp/items/7158701

 

 

 

会場:国立オリンピック記念青少年総合センター  カルチャー棟

 

 

〒151-0052 東京都渋谷区代々木神園町3−1

 

【電車】 

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地下鉄千代田線 代々木公園駅下車(代々木公園方面4番出口) 徒歩約10分

【バス】

新宿駅西口(16番)より 代々木5丁目下車

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